A型肝炎| Hepatitis A
感染経路と予防
A型肝炎ウイルス(HAV)は直接糞口感染か、あるいは汚染された飲食物の摂取による経口感染によって感染する。主要な感染源はカキを含めた飲食物によるもので、2003年の国内の報告ではHAV感染全体の21%がカキが原因であった。
冷凍してもHAVは失活しないが、食材を85度で1分以上加熱するか、または塩素により失活する。HAVに対する不活化ワクチンによる予防が可能である。医療機関の院内感染対策は標準予防策で対応する。
病態
HAVはピコルナウイルス科に属するノンエンベロープウイルスで、正二十面体の構造をもち27~28nmの大きさである。経口摂取されたHAVは酸に耐性であり胃を通過する。その後腸管で複製され肝臓に運ばれる。
HAVは肝臓に特性が高く肝臓以外ではほとんど複製されない。感染した肝細胞から肝類洞を通り腸管に入り糞便に排泄される。HAVは他の急性ウイルス性肝炎と同様に急性肝炎を起こすが、臨床経過のみでは他のウイルス性肝炎と鑑別はできない。
急性肝炎を来した場合は発熱、倦怠感などのインフルエンザ様の症状に引き続き黄疸、肝腫大、濃色尿、灰白色便、血清トランスアミナーゼ(ASTやALT)の上昇などを認める。殆どの患者は3週間程度で症状は改善し、通常慢性化はせず予後は良好である。
診断・治療
急性A型肝炎の診断は急性期のHAV特異的IgMの検出によって行う。発症2週間から検出でき1ヶ月でピークとなり3~6ヶ月頃まで検出される。
また、初期の糞便中にHAVが含まれることがあり核酸検出法によるHAV-RNAの検出も可能である。HAVは急性肝炎を起こし、特定の治療法はなく支持療法を行う。劇症肝炎を発症した場合は肝移植を行う場合がある。
出典
・Centers for Disease Control and Prevention. Travelers' Health: Yellow Book; Chapter 3. Travel-Related Infectious Diseases; Hepatitis A [Internet]. 2020 [cited 2023 Mar 22].Available from: https://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2020/travel-related-infectious-diseases/hepatitis-a ・国立感染症研究所. A型肝炎 [Internet]. [cited 2023 Mar 22].
Available from: https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/320-hepatitis-a-intro.html ・日本感染症学会. A型肝炎[Internet]. [cited 2023 Mar 22].
Available from: https://www.kansensho.or.jp/ref/d08.html
このサイトの執筆者一覧
植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也