サルモネラ感染症(非チフスサルモネラ)| Salmonellosis(Nontyphoidal Salmonella

感染経路と予防

原因菌であるSalmonella enterica subsp. entericaはニワトリを含む家畜の腸管内に常在しており、食肉処理や加工時に鶏肉が汚染され、それをヒトが経口摂取することで感染する。

鶏卵からの感染も知られており、内閣府食品安全委員会の試算では、市販の鶏卵の内容物が汚染されている確率は約0.003%と低いが、危険性はある。

また、爬虫類や両生類などとの接触もサルモネラ感染症の原因になることが知られている。予防のためには、食肉や鶏卵を4℃以下の冷蔵庫で保存し、調理の際に十分な手洗いを行い、75℃以上で加熱する。

病態

ヒトに感染を起こすサルモネラはチフス菌と呼ばれるものも含め、菌種としては全てSalmonella enterica subsp. entericaであり、血清型と呼ばれる分類で分けられる。

非チフスサルモネラ感染症の原因菌の血清型は主にserovar Enteritidisであったが、近年様々な血清型が分離される。感染すると8~48時間の潜伏期を経て、発熱、嘔気と嘔吐、下痢が生じる。潜伏期は原因菌の摂取量が少ないとより長くなる(中央値7日)という報告もある。

胃腸炎患者の最大8%が血液の中に菌が侵入し菌血症を発症する。その際人工血管などの血管内の人工物や大動脈の動脈硬化があると、そこに感染し血管内感染症をきたす場合がある。

診断・治療

診断は病歴で生卵や加熱不十分な肉類の摂取歴を聴取することが重要である。便培養で、SS寒天培地などのサルモネラを分離できる培地を用いる。血液培養も重要である。

腸炎は通常は自然に改善する。下痢は3~7日以内に、発熱は72時間以内に治まることが一般的である。脱水があり経口摂取困難であれば、点滴で水分補充する。抗菌薬を投与しても有症状期間を短くせず、便中の菌消失までの期間がより長くなった報告もあり、抗菌薬は投与しない。

菌血症の場合は、第3世代セフェム、キノロン系などの抗菌薬による治療が必要になる。人工物や大動脈に感染をきたした血管内感染症がある場合は、さらに長期の治療期間と、場合により手術が必要になる。

出典

・John E. Bennett, Raphael Dolin, Martin J. Blaser. (2019). Mandell, Douglas, and Bennett's principles and practice of infectious diseases. Philadelphia, PA :Elsevier/Saunders, ・“Salmonella and Food“. Centers for Disease Control and Prevention Food Safety. 2022-05-27. https://www.cdc.gov/foodsafety/communication/salmonella-food.html. (アクセス2023-03-07)

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植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也

犬
この感染症の由来は?

- Bird

鳥は鳥インフルエンザや、サルモネラ、クリプトコッカスなどの病原体のホストとなります。これらの感染症は、鳥と直接接触したり、感染した鳥の糞や排泄物に触れることで人に伝播します。