カンピロバクター腸炎| Campylobacter enteritis

感染経路と予防

カンピロバクター腸炎の原因はCampylobacter jejuniC. coli などの螺旋型の細菌である。Campylobacter 属菌はウシやヒツジ、家禽など様々な動物の消化管内に常在する。

特に飼育されているニワトリの多くに常在しており、その処理・加工過程で鶏肉が汚染され、生、あるいは不十分な加熱の鶏肉を経口摂取することで感染する。

予防には十分な加熱が必要であり、鶏肉を水洗いし水しぶきの飛散なども防ぐ必要がある。

病態

Campylobacter 属菌に感染すると、2~5日間の潜伏期を経て、発熱、頭痛、全身倦怠感などを認め、多くの場合はそれに続いて約12~24時間後に、腹痛と下痢を認める。

また、腸炎症状の2~3週後に四肢の痺れ、麻痺などで発症するギランバレー症候群を発症することがあり、腸炎症状改善後も注意が必要である。

診断・治療

診断は不十分な加熱の鶏肉を摂取した病歴の聴取が鍵となる。頭痛と高熱を伴う下痢を認めた場合はカンピロバクターを想起する。便のGram染色で小さな短い螺旋状の菌体を見つけることで早期に診断をつけられることがある。便培養でCampylobacter 属菌を同定するためには、検体を提出する際にカンピロバクターの疑いがあることを検査室に伝え、選択培地を使用する必要がある。

治療は、通常自然に改善するため、抗菌薬投与は不要である。下痢は1から3日程度で改善することが多いが、1-2割で1週間以上症状が持続することもある。脱水があり経口摂取困難であれば、点滴で行い水分を補う必要がある。

重症の場合や症状が1週間以上持続し改善がない場合はアジスロマイシンなどの抗菌薬による治療を検討する。

出典

・John E. Bennett, Raphael Dolin, Martin J. Blaser. (2019). Mandell, Douglas, and Bennett's principles and practice of infectious diseases. Philadelphia, PA :Elsevier/Saunders, ・高橋正樹. “カンピロバクター感染症とは” 国立感染症研究所. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/385-campylobacter-intro.html (アクセス2023-02-25)

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