コリネバクテリウム・ウルセランス感染症| Corynebacterium ulcerans infection
感染経路と予防
ウルセランス感染症は、Corynebacterium ulcerans(ウルセランス菌)という細菌によって惹き起こされ、ジフテリア症によく似た症状を示す人獣共通感染症である。
2001年以降国内ではイヌ、ネコからの感染例が散見されており死亡例もある。感染経路はウルセランス菌に感染したイヌ、ネコがくしゃみや鼻汁など風邪に似た症状や皮膚病を示すことがあり、動物間やヒトへの感染があるがヒトーヒト感染は否定されていないものの可能性は低いと考えられる。
飼育しているペットに症状が出たときには獣医師による診察を受け、動物への過度な接触を避け、接触後は手洗いを徹底する。
病態
呼吸器感染の場合はジフテリア症に似た臨床症状を呈する。はじめは風邪に似た症状を呈し、咽頭痛、咳などとともに扁桃や咽頭などに偽膜形成や白苔を認める(ジフテリア症状)ことがあり、重篤な場合には呼吸困難を呈し死に至ることもある。
呼吸器感染以外に頸部や腋窩のリンパ節炎が数多く報告されている。また皮膚病変を呈することがある。
診断・治療
ペットの飼育状況や接触歴を聴取し、該当する症状がある場合は塗抹検査、培養・同定検査、核酸検出検査と分離培養菌によるジフテリア毒素遺伝子の核酸増幅法で診断する。
治療はウルセランス菌に対しては抗菌薬療法が有効であるが、マクロライド系、キノロン系の注射薬が推奨される。
出典
大塚喜人,他.2008. 感染症誌82: 552–553 朝倉昇司,大塚喜人,他.2006. コリネバクテリウム・ウルセランスによる頚部リンパ節炎を発症した1例 IASR 27: 124–125.
コリネバクテリウム・ウルセランスに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/corynebacterium_02.html
このサイトの執筆者一覧
植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也