カプノサイトファーガ感染症| Capnocytophaga canimorsus infection
感染経路と予防
カプノサイトファーガ感染症は、イヌの口腔内に常在しているカプノサイトファーガ属の細菌が、イヌに咬まれたり舐められたりすることで感染する。
臨床的には、カプノサイトファーガ・カニモルサス(C. canimorsus) が重症になりやすいことで知られる。本邦では国内のイヌの74~82%がC. canimorsusを保菌していると報告されており、特に免疫不全、脾摘後、肝硬変、アルコール多飲などの患者は重症化しやすく、ワクチンもないため医学的にはイヌとの接触を避けることが重要である。
病態
臨床的には噛まれた部位の創部感染症よりも、敗血症を伴う全身感染症が問題となる。イヌに咬まれてから症状が出るまでは、平均5~6日で、症状は非特異的であり、発熱、倦怠感、腹痛、嘔気、頭痛、意識障害などが現れる。重症化すると敗血症に至るため、血液培養が陽性となることが多い。
診断に置いて目立つ特徴は、C. canimorsus 敗血症のうち20-40%の症例で、体幹または四肢に様々な発疹が出現することである。最も重症な場合は点状出血を伴う電撃性紫斑病の形を取る。 C. canimorsusによる敗血症の死亡率は約30%と高い。また髄膜炎、眼感染症、妊娠関連の感染症、骨・軟部組織の感染症などの様々な症状を起こすこともある。
診断・治療
診断では犬などの動物との接触歴を確認することが重要である。咬傷がなくても感染を起こしうる。検査室にカプノサイトファーガ感染症を疑っていることを伝え、血液培養期間の延長を検討してもらう事が重要である。典型的には培養陽性まで3-7日、文献的には25日後に要請となった報告がある。一般的な同定キットで属名、菌種名まで同定することは難しく、質量分析器で同定できたという報告もあるが、16SrRNAシークエンス解析などが必要となることもある。初期治療は患者の臨床所見等に応じて早期に β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリ ン系薬、またはカルバペネム系抗菌薬を投与する。致死的病態でなければSBT/ABPCが治療薬として適切と考える。
出典
Uptodate Capnocytophaga
厚生労働省「カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/capnocytophaga.html
このサイトの執筆者一覧
植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也