狂犬病| Rabies
感染経路と予防
"狂犬病は世界中で年間5万人以上が死亡する人獣共通感染症でほとんど全ての哺乳動物から感染する可能性がある。発症するとほぼ100%死亡する。発展途上国では、ヒトに感染した報告例の90%以上でイヌが関与していると報告されている。日本では1957年を最後に国内感染はなく、その後は海外で感染し帰国後発症した輸入例がある。
ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス(Rabies virus、RV)に感染し発病したイヌは、唾液などの分泌液にウイルスを排泄する。発症したイヌに咬まれたり舐められたり引っ掻かれたりするなどして、唾液が皮膚の擦過傷や粘膜に接触することで感染する。日本・英国・オーストラリア・ニュージーランドなどの一部の国々を除いて、全世界に分布するが、感染例はインドが最も多く、その他アフリカ、アジア、中南米などは感染リスクが比較的高い。咬傷の際してはリスクに応じてワクチン、狂犬病免疫グロブリンの投与が推奨されるが、感染リスクの高い国に渡航する場合、事前に狂犬病ワクチンを接種することが重要である。 "
病態
狂犬病ウイルスは、まず咬まれるなどした感染部位の近くで増殖し、局所の運動神経や感覚神経に侵入し、脊髄や脳に到達する。通常1~3カ月で発病する。極めてまれに発症までに数年の年月を要することもある。
発症後は、ものが飲み込みづらくなり、液体を飲もうとすると筋肉がけいれんするため、水を恐れるようになる(恐水症)。また、風をおそれるようになる恐風症状も特徴的である。脳炎を起こし、粗暴な行動を取るようになることがある。やがて昏睡状態となり、呼吸が麻痺し死亡する。
診断・治療
"狂犬病の診断は、海外渡航歴、動物接触歴、ワクチン接種歴などの細かい病歴聴取が重要である。病原体診断として核酸検出検査、抗原検査、抗体検査、分離・同定による病原体の検出がある。発症してからは有効な治療法がない。
咬まれた後(曝露後)の狂犬病予防には、直ちに石鹸などを使った創傷洗浄を行うことが推奨される。直ちに狂犬病免疫グロブリンの接種が奨められているが日本では入手できない。直ちに狂犬病ワクチン接種を開始、合計5-6回の接種が必要となる。事前に(暴露前に)ワクチン接種を行なっている場合、免疫グロブリンは不要であるが暴露前に接種していても2回の追加接種が必要である。"
出典
厚生労働省検疫所FORTH
https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name47.html
Ridder BA. Rabies vaccines: WHO position paper – April 2018
https://www.who.int/publications/i/item/who-wer9316
このサイトの執筆者一覧
植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也