コリネバクテリウム・ウルセランス感染症| Corynebacterium ulcerans infection
感染経路と予防
Corynebacterium ulceransはネコの口腔内に常在し、咬傷や傷を舐められることにより感染が起こる。
予防は危険な状況を避けネコに噛まれないことがもっとも重要である。ネコ咬傷では細い犬歯が深く刺さることが特徴であり、創の感染率が高い。関節や腱の近くなどを受傷した場合は、創感染として予防的抗菌薬投与が有用である。
一般的に創感染で使用される第1世代セフェムは無効であり、日本ではアモキシシリン/クラブラン酸にアモキシシリンを加えた処方が使用される。
病態
呼吸器感染の場合はジフテリア症に似た臨床症状を呈する。はじめは風邪に似た症状を呈し、咽頭痛、咳などとともに扁桃や咽頭などに偽膜形成や白苔を認める(ジフテリア症状)ことがあり、重篤な場合には呼吸困難を呈し死に至ることもある。呼吸器感染以外に頸部や腋窩のリンパ節炎が数多く報告されている。また皮膚病変を呈することがある。
診断・治療
ペットの飼育状況や接触歴を聴取し、該当する症状がある場合は塗抹検査、培養・同定検査、核酸検出検査と分離培養菌によるジフテリア毒素遺伝子の核酸増幅法で診断する。治療はウルセランス菌に対しては抗菌薬療法が有効であるが、マクロライド系、キノロン系の注射薬が推奨される。
出典
大塚喜人,他.2008. 感染症誌82: 552–553 朝倉昇司,大塚喜人,他.2006. コリネバクテリウム・ウルセランスによる頚部リンパ節炎を発症した1例.IASR 27: 124–125. コリネバクテリウム・ウルセランスに関するQ&Ahttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/corynebacterium_02.html
このサイトの執筆者一覧
植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也