ネコ咬傷による創部感染| Cat bite wound infections with Pasteurella multocida

感染経路と予防

Pasteurella multicidaはネコの口腔内に常在し、咬傷や傷を舐められることにより感染が起こる。

予防は危険な状況を避けネコに噛まれないことがもっとも重要である。ネコ咬傷では細い犬歯が深く刺さることが特徴であり、創の感染率が高い。関節や腱の近くなどを受傷した場合は、創感染として予防的抗菌薬投与が有用である。

一般的に創感染で使用される第1世代セフェムは無効であり、日本ではアモキシシリン/クラブラン酸にアモキシシリンを加えた処方が使用される。

病態

咬傷部位の皮膚軟部組織感染症や化膿性関節炎、骨髄炎、稀に髄膜炎、菌血症、心内膜炎、腹膜透析チューブを噛まれることでCAPD腹膜炎を起こす。

暴露から24時間以内に急速に拡大する炎症を外傷部位に惹き起こすことが特徴的である。

診断・治療

診断にはネコとの接触歴を聴取することがもっとも重要である。P. multocidaは一般的な培養検査で発育する。

P. multocida自体はペニシリンが第一選択であるが、咬傷後感染症ではネコの口腔内嫌気性菌なども関与するためβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンが推奨される。重症の場合は入院の上SBT/ABPCの静注を行う。

P. multocidaは通常の創部感染の治療でよく使用される第1世代セフェムやクリンダマイシンは無効であることにも注意が必要である。

出典

Clin Microbiol Rev. 2013 Jul;26(3):631-55.
doi: 10.1128/CMR.00024-13.
Pasteurella multocida: from zoonosis to cellular microbiology
PMID: 23824375
Clin Microbiol Rev. 2013 Jul;26(3):631-55.
doi: 10.1128/CMR.00024-13.
Pasteurella multocida: from zoonosis to cellular microbiology
PMID: 23824375
Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft tissue infections: 2014 update by the infectious diseases society of America. Clin Infect Dis.
2014;59:147-59.
PMID: 24947530 doi:10.1093/cid/ciu296

このサイトの執筆者一覧

植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也

猫
この感染症の由来は?

- Cat

猫はトキソプラズマ症の媒体となることがあります。感染した猫の糞から人へ感染することがあります。