ツツガムシ病| Scrub Typhus
感染経路と予防
ツツガムシ病はOrientia tsutsugamushiという病原微生物(リケッチア)が原因の感染症である。ダニの一種であるツツガムシの幼虫がヒトやシカを含む哺乳動物に吸着することで移行し、哺乳動物に感染する。
ツツガムシの幼虫が感染動物に吸着してもツツガムシの幼虫はO. tsutsugamushiを獲得しない。ツツガムシからヒトへの移行には6時間程度必要であるとされる。
予防にはツツガムシの吸着を防ぐために、草むらに立ち入らない、肌を露出させない、虫除け剤を使用するなどがポイントである。
病態
発熱、皮疹、ダニの刺し口(痂皮)が三徴であり、同じリケッチア症である日本紅斑熱と類似した症状を呈する。ツツガムシからヒトに移行したOrientia tsutsugamushi は様々な細胞内に侵入し細胞内で増殖する。
5~20日の潜伏期を経て頭痛や38.5℃以上の発熱、全身倦怠感で発症し、数日~1週間程度遅れて全身性の皮疹が出現する。
皮疹は体幹に優位な傾向があり、手掌・足底には通常出現しない点が日本紅斑熱との違いである。刺し口の痂皮は日本紅斑熱より大きい傾向がある。
診断・治療
ツツガムシ病は北海道を除く全国で発生しており、地域により発生時期が異なり、北日本などでは春から初夏に、房総半島や西日本などでは晩秋から初冬に多く発生する。
診断は疫学的な状況を考慮して、病態に示した症状があれば、ペア血清による抗体価測定または、刺し口の痂皮を検体とした核酸検出検査によって診断する。
治療が遅れると重症化し、死亡例もあることから、診断確定を待たずに疑った時点でテトラサイクリン系の抗菌薬による治療を開始する。
出典
・Microbes Infect. 2001 Jan;3(1):11-21. ・小川基彦. “ツツガムシ病とは” 国立感染症研究所. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/436-tsutsugamushi.html (アクセス2023-02-25)このサイトの執筆者一覧
植田 秀樹,大川 直紀,大塚 喜人,窪田 佳史,倉澤 勘太,津山 頌章,中尾 仁彦,藤井 元輝,松田 直也