ブドウ球菌食中毒| Staphylococcal Food Poisoning
感染経路と予防
ブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) が食品中で増殖する時に産生するエンテロトキシンという毒素を、食品と共に摂取することによって起こる食中毒である。
欧米を中心に、チーズの摂食に関連した黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンによる食中毒の発生が報告されている。
予防は調理者・製造者の手指衛生や食品の温度管理(10℃以下に保つ)を厳密に行うことが重要である。症状は菌本体でなく毒素によって惹き起こされるため、ヒトからヒトへの感染はない。
病態
黄色ブドウ球菌が生成したエンテロトキシンを摂取すると、接種後1~6時間以内に嘔気・嘔吐・腹痛が始まることが多く、発熱を起こすことはまれである(過去にブドウ球菌食中毒では嘔吐は87%、下痢は89%、腹痛は72%,発熱9%だった報告がある)。
診断・治療
嘔吐物や食品からエンテロトキシンを検査することができるが、黄色ブドウ球菌による食中毒は通常、臨床的経過から診断される。
通常症状の持続時間は24時間未満で、多くの場合12時間以内に改善することも疾患の診断をする上で手がかりになる。特別な治療法はなく,補液と対症療法を行い経過をみる。下痢止め・抗菌薬は不要である。
出典
青木眞 感染症診療マニュアル 第4版
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/511-aureus.html
CDC.“Staphylococcal (Staph) Food Poisoning”
https://www.cdc.gov/foodsafety/diseases/staphylococcal.html
Asian-Australas J Anim Sci 2016;29:307-14. Bennett SD, Walsh KA, Gould LH. Foodborne disease outbreaks caused by Bacillus cereus,
Clostridium perfringens, and Staphylococcus aureus--United States, 1998-2008.
Clin Infect Dis 2013;57:425-33.
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