会長挨拶

 

第66回日本神経病理学会総会学術研究会
会長 伊東 秀文

(和歌山県立医科大学 特別顧問/関西医療大学 副学長)

 

第66回日本神経病理学会総会学術研究会を2025年(令和7年)6月5日(木)から7日(土)までの3日間、和歌山市中心部の和歌山城ホールにて開催いたします。1960年の第1回学術研究会の開催以来、64年にわたってわが国の神経病理学研究の発展に寄与してきた歴史と伝統ある本学術研究会の会長を拝命し、身に余る光栄と存じております。

和歌山県で本学術研究会が開催されるのは初めてのことですが、和歌山県は世界的に有名な紀伊ALS/パーキンソン・認知症複合体(PDC)の多発地域を県内に擁しております。その原因究明に向けた近代的な研究が和歌山県立医科大学の木村潔教授、八瀬善郎教授らによって開始されたのが1959年であり、まさに本学術研究会とともに歩みを進め、多くの臨床神経学者・神経病理学者を輩出してきました。

一方、和歌山県には熊野三山と高野山というふたつの聖地があり、これらに至る参詣道が世界遺産に登録されていることから、今回の大会テーマとして“分子神経病理学とともに歩む臨床神経学の聖地”を掲げました。難治性神経疾患に苦しむ患者さんの病を治し、心を癒すことが臨床神経学の究極の目標であり、私たち神経学者がめざす光あふれる「聖地」ですが、いまだその「聖地」は彼方の靄の中にあります。私たちはそこに向かって一歩一歩、あゆみを進めなくてはなりませんが、私たちには共に手を携えて歩んでくれる「神経病理学」という心強い同志がいます。

近年の臨床神経学の発展には瞠目すべきものがありますが、その発展には神経化学や人類遺伝学、神経免疫学など、多くの新たな研究分野・技術革新が寄与しています。そうした中にあって神経病理学は、疾患が人体に対してどのような変化をもたらし、どのように病態を形成しているのかを直接可視化することができるという点において、もっとも揺るぎのない信頼できる情報を提供してくれる研究分野です。また、神経科学におけるモデル動物の開発やiPS細胞技術の進歩においても、それらが患者における変化を確実に反映できているかを評価するには、神経病理学的な解析が不可欠です。このように、神経病理学は最も臨床医学に近く、すべての神経科学分野の土台をなすものです。

本学術研究会の特徴のひとつは、顕微鏡をのぞきながら対面でディスカッションを行うことであり、その議論を通して症例の理解を深め、疾患の病態を明らかにし、治療法への手がかりを探索してきました。COVID-19パンデミックにより中断を余儀なくされていたこの重要なディスカッションの場が、下関での第65回学術研究会から再開可能の見込みであり、大変喜ばしいことと思っています。これからの神経学を牽引する若い研究者の先生方と、経験と学識を備えたエキスパートの先生方が、一台の顕微鏡を通じて活発な意見交換を交わす場を、第66回学術研究会でも設けたいと考えております。

紀伊山地は神話の時代から、神々が鎮まる特別な地と考えられてきました。仏教では、深い森林に覆われた山々を浄土に見立て、自然と一体となり仏の持つ能力を習得するための修行の場としました。太古から自然崇拝の聖地として敬われてきたこの和歌山の地で開催される今回の学術研究会が、臨床神経学の「聖地」に近づく着実な一歩となるよう祈念しています。

令和6年5月吉日

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