第35回日本エイズ学会学術集会・総会
会長 俣野 哲朗
国立感染症研究所エイズ研究センター長
東京大学医科学研究所委嘱教授
第35回日本エイズ学会学術集会・総会
会長 俣野 哲朗
国立感染症研究所エイズ研究センター長
東京大学医科学研究所委嘱教授
この度、第35回日本エイズ学会学術集会・総会を開催させていただくこととなりました。日本エイズ学会学術集会・総会は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)・エイズの諸問題に取り組む人々が一堂に会し、HIV感染症のコントロールに向けて、最新の研究成果発表、情報共有・発信、議論等を推進することを目的として、30年以上にわたり毎年開催されてまいりました。第35回は、特に「未来統合型社会・臨床・基礎連携:SCB to the Future」をメインテーマとして開催させていただきます。
1981年に米国でエイズ症例の最初の報告がなされて以来、40年の歳月が流れました。この間、抗HIV薬開発等の科学の飛躍的進歩や多くの方々の努力によって、HIV感染症の生命予後は改善しました。しかし、今なお世界のHIV感染者総数は3500万人以上で、毎年150万人以上の方々が新たに感染していると推定されています。抗HIV薬治療下の感染者の方々の加齢関連疾患等も新たな課題です。このようにHIV感染症のコントロールに向けた取組みは、未だ道半ばの状況ですが、本大会では、この40年間を振り返りつつ、未来に向け新たな発信をしていきたいと考えております。
社会・臨床・基礎のセッションにて、最先端の知見の共有・議論を進めていけるよう企画してまいりましたが、特に本大会では、SCB(社会[Social]・臨床[Clinical]・基礎[Basic])をキーワードとし、社会・臨床・基礎連携に重点をおいて幅広い視点での連携シンポジウムを企画させていただきました。これまでHIV感染症に対する取組みとして、分子・細胞レベル、個体レベル、集団・社会レベルの各々の課題克服の重要性を認識し、社会・臨床・基礎連携を進めてきたことは、エイズ研究の大きな特徴であります。今後、社会・臨床・基礎の各分野を進展させ、SCB三者の連携をさらに発展させることは、早期診断・早期治療の推進に加え、将来のワクチンやCURE(治癒)法の開発・導入促進の鍵となると考えられます。本大会の開催により、真のHIV感染症コントロールに向けた未来統合型社会・臨床・基礎連携の加速につながることを期待しております。
HIV パンデミックは、無症候感染者からの「みえない感染拡大」制御の難しさを人類に知らしめましたが、その後、肝炎ウイルス、HTLV に引き続き、2020 年のCOVID-19 のパンデミックで、「みえない感染拡大」の脅威を再認識するにいたっています。HIV 研究・対策で培われてきた知見・技術は、これらの感染症に対する取組みに活用されてきており、グローバルな視点での社会・臨床・基礎連携をはじめとするHIV 感染症に対する取組みは、感染症研究において先導的役割を担うものと考えられます。このような状況をふまえ、本大会では、COVID-19 等の感染症に関するセッションも企画させていただく一方、国際連携をテーマとするセッションも重要視しております。
COVID-19流行状況もふまえ、本大会は、東京のグランドプリンスホテル高輪でのonsite session参加に加えて、live streamingやon demandでのweb参加も可能とするハイブリッド形式での開催とさせていただきました。本大会の開催に向け、ご協力いただきました数多くの皆様方には、心より御礼申し上げます。一堂に会しての議論の機会を確保することが難しい今日ではございますが、皆様方のご協力のもと、できる限り多くの方々にご参加いただき、有意義な会となるよう祈念するとともに、今後のHIV研究のさらなる発展につながることを期待しております。
2021年9月吉日
第35回日本エイズ学会学術集会・総会
社会系部門長 生島 嗣
認定NPO法人ぷれいす東京
エイズ学会の最大の魅力は、基礎、臨床そして社会の領域が相互に連携していることだ。第35回日本エイズ学会学術集会・総会は、SCBとしてそれを全面に掲げている。近年、U=U(検出限界以下ならば感染しない)、PrEP(暴露前予防内服)、ゲノム情報の活用など、新たな切り口が次々と登場し、これまで以上に3領域が協同することが必要とされている。現在、新型コロナウイルスの感染拡大下で、地域のなかでの支援サービス提供や予防啓発の情報発信など、新たな難しさに向き合っている。年に1度のこの学術集会にて、相互の連携を強めながら、パワーを得て、再び日々の取り組みに戻れたらと思う。
第35回日本エイズ学会学術集会・総会
臨床系部門長 岡 慎一
国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター
新型コロナのワクチン接種が進んだとはいえ、まだまだ新型コロナの状況をにらんでのエイズ学会です。新型コロナは、HIV感染症に対し臨床のみならず、社会や基礎分野にも大きな影響を与えました。今回の発表のなかには新型コロナに関連するものが少なくありません。分野横断的なシンポジュウムもあり、エイズ学会ならではの企画です。また、治療の手引きを始めとする従来からの継続的な演題に加え、今回は若手を中心としたヨーロッパとの合同ワークショップも企画しています。今後、このような新しい企画が、この学会をきっかけにどのように発展していくのかも楽しみです。特に臨床系の先生方は、新型コロナ対応に日々大忙しと思います。バイブリッド開催でon demand配信も沢山あります。診療の合間をみつけて是非ご参加下さい。
第35回日本エイズ学会学術集会・総会
基礎系部門長 立川 愛
国立感染症研究所 エイズ研究センター
感染症は、宿主と病原体との相互作用の結果です。HIV感染症研究はヒトの免疫学を大きく進歩させており、蓄積されてきた技術・知見は新型コロナウイルス感染症の病態解明にも大きく貢献しています。しかしながら、いまだHIV感染症に対する根治療法は見出されておらず、HIV感染症に対する基礎研究の重要性は増していると考えます。
今回のパンデミックで、感染症は全世界共通の脅威であり、世界中の研究者が連携し、英知を結集してその解決策を見出していくことの重要性が再認識されたと思います。今回のエイズ学会では、アメリカ・フランスの基礎研究者をお招きし、日米・日仏シンポジウムを開催いたします。海外の研究者との交流の機会が奪われている中、最新の知見に触れ、科学的好奇心を満たしていただける学会になることを願っています。