ご挨拶
第18回日本うつ病学会総会 会長ご挨拶
この度、第18回の日本うつ病学会学術集会の会長を仰せつかりました、杏林大学の渡邊です。今回は、第21回日本認知療法・認知行動療法学会(慶應義塾大学 佐渡充洋大会長)との合同学術集会として、パシフィコ横浜にて2021年7月8日から10日の日程で開催させていただくことになりました。
本学術集会のテーマは、「困難の先にある未来のために」と致しました。ご存知の通り、全世界に未曾有の甚大なる被害をもたらしている新型コロナウィルス感染症は、我々の生活様式から経済に至るまで様々な影響を及ぼし、今もなお止むことはありません。それは精神科領域においても例外ではなく、新型コロナウィルス感染症に関連した抑うつや不安の出現、リモートワークによる睡眠覚醒リズム障害や家族問題の顕在化、経済的不況と自殺の問題、外来通院自粛と遠隔診療の推奨、など多くの課題が突き付けられました。本集会では、これまで経験したことのないこの特殊な状況を正しく理解し、そしてその先にある未来に向けて我々がどのように取り組んでいくべきかについて議論できればと考えております。同時に、コロナ禍といえどもサイエンスとしての精神医学の歩みを止めてはなりません。うつ病や双極性障害にまつわる近年注目されている諸問題、例えば難治性うつ状態、バイオマーカーの開発、認知機能障害の把握と改善、新薬の創出、神経刺激療法の可能性、ガイドラインの改訂などについても積極的に取り上げたいと考えております。
1859年の開港以来、世界に窓を開く革新的な都市であるこの横浜で、精神科医、心療内科医、産業医だけでなく看護師や保健師、公認心理師、薬剤師、作業療法士、臨床検査技師など多くの先生方と積極的に議論し合える場になればと思っております。
当日はウェブでの講演を含め、色々な趣向を凝らしたいと考えておりますので、国内外問わず多くの研究者にご参加いただき、明るい未来作りの一助になればと願っております。是非とも本集会に足をお運びいただければと存じます。
第21回日本認知療法・認知行動療法学会 会長ご挨拶
2021年7月8日から10日、第21回日本認知療法・認知行動療法学会が、第18 回日本うつ病学会総会と合同でパシフィコ横浜にて開催されることになりました。第21回日本認知療法・認知行動療法学会の会長を仰せつかり、身の引き締まる思いです。
今回の大会テーマは「困難の先にある未来のために」としました。
このテーマを選んだ理由は、私たちが今直面する新型コロナウィルス感染症という大きな困難にあります。
このような大きな困難に直面すると、私たちは、大きな恐れや不安、落ち込み、怒りといった様々な不快な感情に覆い尽くされ、一刻も早く排除しようとこうした感情と闘ってしまいがちです。しかしいくら排除しようしても、こうした感情は簡単にはなくならないため、排除しようとすればするほどかえって苦しさが増してしまうことになりかねません。
マインドフルネス認知療法をはじめとした第三世代認知療法では、こうした不快な感情を排除せず、ありのままに受け入れるという姿勢が強調されます。その上で今この瞬間にできることは何なのかを明らかにし、瞬間、瞬間、それに真摯に取り組んでいくことを積み重ねていくのです。新型コロナウィルス感染症という大きな困難に対応していく際には、こうした認知行動療法の基本姿勢が何より求められるのではないかと思います。
今回の学術集会では、マインドフルネス認知療法を開発したトロント大学のジンデル・シーガル教授など、国内外の著名な先生方をお招きする予定です。また認知行動療法が、もはや医療だけでなく、教育、ビジネス、産業保健といった幅広い領域に展開していること、また実施者も医師や臨床心理士だけでなく、看護師、薬剤師、作業療法士、教師など多様性に満ちていることを踏まえ、こうしたニーズに応えられるよう、ワークショップも例年以上のラインアップで臨む予定です。是非とも多くの方々にお越しいただければと願っています。
今回の学術集会は、大きな困難の中での開催になることと思います。しかし、そうであったとしても、今この瞬間にできることを見極め、真摯に取り組み続けていくことで、新たな未来が切り開かれるかもしれません。皆様と一緒に、困難の先にある未来にむけて、その一歩を踏み出せることを願っています。
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- 第18回日本うつ病学会総会
会長 渡邊 衡一郎
杏林大学医学部精神神経科学教室 教授
- 第18回日本うつ病学会総会
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- 第21回日本認知療法・認知行動療法学会
会長 佐渡 充洋
慶應義塾大学医学部精神神経科学教室
- 第21回日本認知療法・認知行動療法学会