会長挨拶
- 国立循環器病研究センター
教育推進部・小児循環器部
白石 公
COVID19の関係で全ての学術集会の開催が儘ならぬ状況ですが、第57回日本小児循環器学会学術集会は、当初より1日遅れる日程で、2021年7月9日(金)から11日(日)、奈良市の新しいコンベンションセンターで開催することといたしました。大阪中心部とは違った落ち着いた雰囲気での学術集会を期待して開催地を決めました。今後の感染状況よりますが、開催様式は第56回学術集会と同様にonlineを主体としたhybrid形式を想定しています。現地での開催が制限される分、onlineの長所を積極的に見出だし、学術集会の新しいあり方を模索してみたいとpositiveに考えています。
第57回の学術集会のテーマは「Challenge, Innovation, and Creation for the Future -未来に繋げる挑戦と創造のこころ」といたしました。その心は、患者さんを助けるためには、私たち医療人がまず元気で活力に溢れ、様々な問題に果敢に挑戦し、未来を見据えて創造力を働かせ、改革を推し進める必要がある、と考えたためです。最近は、日常診療が複雑で忙しくなったために、以前に比べてリスクを冒してでも未来のために挑戦しようとする雰囲気が我々全体に少なくなっています。特に若い先生には大胆に挑戦し積極的に外の空気を吸いに行ってもらいたい、そしてそのような自己研鑽が病気の子ども達の医療に貢献することを再認識して欲しいと願っています。このことは指導医の先生方の問題でもあり、学会全体の課題でもあります。学術集会を通じてそれぞれの立場で“挑戦することの大切さ”を再認識していただければと考えます。国立循環器病研究センターも2019年に新たな地に移り、開設以来42年ぶりにリセットしました。我々も新しい施設で気持ちを一新し、挑戦し続けているところです。
第57回学術集会では、JCK 3カ国Pediatric Heart Forumも同時に開催いたします。こちらはwebでの開催を予定しています。pandemicの状況下ですが、日本が中心となり、アジア諸国の人々とcommunicationを継続し、この地域の診療や研究レベルを上げてゆく必要があると考えます。数多くの演題をお待ちいたします。
同時に、国際小児心臓・肺移植シンポジウムも並行開催されます(会長:国立循環器病研究センター福嶌教偉先生)。改正臓器移植法が施行されて10年が経過し、小児の臓器移植を取り巻く状況はずいぶん改善しました。その反面、提供者の問題など解決すべきことも山積しています。これら小児心臓・肺移植に関する様々な問題を、国際的にdiscussionしようとする大変意義深いシンポジウムです。是非ご参加ください。
奈良は日本で最初に都が定まった地です。奈良時代は疫病や飢饉や政変で波乱万丈の短い時代でした。しかしながら人々は、“何とかして日本を立派な国にしたい”と考え、学問や律令体系を確立するために多くの遣唐使を派遣し、一方では途轍もないスケールの大仏を建立し、また唐の最高僧の一人であった鑑真和上を歳月をかけて招聘するなど、歴史上、日本が初めて国を挙げて国際化に力を注いだ時代でもありました。社寺や博物館には、“日本を立派な国にしたい”と願う、当時の人々の熱い思いが伝わる貴重な遺産がたくさん残っています。第57回学術集会は、日本の国際化の原点となる地から、世界に向けて情報を発信したいと考えています。現地にお越しの際には、このような古びとの熱い心意気も是非感じ取っていただければと思います。