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日本区域麻酔学会 第10回学術集会
会長 廣瀬 宗孝
(兵庫医科大学麻酔科学・疼痛制御科学講座 主任教授)
この度、記念すべき第10回学術集会を、大阪国際会議場で開催させていただくことになりました。兵庫医科大学は、万葉集で数多く詠まれた武庫川の畔にあります。その武庫川は大阪湾に流れ出ており、古代は大阪の難波津から東に向かう船から、美しい武庫の港が見えたそうです。今の大阪湾はコンクリートですっかり覆われてしまい、残念ながらその面影はありませんが、会場やその周辺の尼崎市や西宮市にお越しいただいて、古の和歌を思い出しながら古代の日本の風景を、ぜひ想像してみてください。そうしますと、本大会のポスターの絵が「朝開き漕ぎ出で来れば武庫の浦の潮干の潟に鶴が声すも」の風景に見えます。
日本区域麻酔学会の会員数は2,000名を超えました。このように多くの方が区域麻酔に興味をもつようになったのは、すばらしい超音波診断装置が開発され、新しい局所麻酔薬やブロック針が臨床の現場で使用できるようになると共に、様々な区域麻酔法が次々と発表されてきたことが、その要因であることは明らかです。またどうして局所麻酔薬はナトリウムチャネル阻害以外の作用をもつのか、区域麻酔が鎮痛作用以外の効果をもたらすのは何故なのか、などの基礎医学領域の興味も尽きません。本大会でも様々な切り口を介して、区域麻酔に関わるQuestionに対するAnswerを引き出すための演題を、数多く準備しました。ご講演いただく皆様には、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
COVID-19感染症の影響で、第7回学術集会から開催形式が大きく変化しました。当初はハイブリッドやオンデマンドという聞きなれない用語に戸惑いましたが、この新しい開催様式は参加方法の選択肢を増やす効果があり、より多くの方が大会に参加できるようになりました。本大会でも、感染状況や社会情勢の変化に合わせて開催様式を選択したいと考えています。本大会のポスターに、本大会のキャッチコピーとして「変わる社会に備える」と記しました。日本の医療の重点課題は、いかに地域医療を支え、医師の地域偏在や働き方を改善することとされています。以前は超高齢化社会が進み、人口が減少するという変化の中で、この課題を達成することが目標とされていましたが、今は感染症蔓延だけでなく、2022年2月からの地球規模の社会変化も加わり、より多くの変化の中での対応が求められるようになりました。このような気持ちを、このキャッチコピーに込めました。
和歌に戻りますが、「難波津に咲くやこの花冬ごもり今を春べと咲くやこの花」という有名な歌があります。暖かくなり花が咲き始めるころ、みなさまが大阪国際会議場にご来場されますことを、心よりお待ち申しあげます。