ご挨拶

第78回日本公衆衛生学会総会
学会長 安田 誠史
高知大学教育研究部医療学系 教授

第78回日本公衆衛生学会総会を2019年10月23日(水)から25日(金)にかけて、高知県高知市において、テーマ「実践と研究との協働の深化~マインドとコンピテンシー~」の下に開催させていただくことになりました。

中国四国地域で唯一の本学会総会未開催県である高知県が、開催経験県に仲間入りする学会総会です。その他、改元直後、予定通りなら消費税の10%への引き上げ直後など、会員の皆様の記憶に残りやすい出来事が付随する学会総会を担当させていただきます。これらの出来事に比べると、本学会総会のテーマは、これまでもしばしば取り上げられてきた「連携」というキーワードと重なり、インパクトに乏しいかもしれません。このテーマとさせていただいたのは、会員の皆様と、サブテーマ「マインドとコンピテンシー」の観点から、「実践と研究との協働」について議論したいと考えているからです。

人びとが健康、安全、安心に暮らすための基盤である公衆衛生を、実践活動の効果を評価しながら向上させるために、また、公衆衛生の領域で起こる多様な新課題を迅速に把握し、対応策を時宜を失することなく社会実装するために、実践と研究との協働cooperationは欠かせません。しかし、公衆衛生の領域の実践と研究との間にはまだ距離があり、多くの場合、それぞれでの成果が別々に発信されるだけに留まっています。実践と研究との協働による正の相互作用によって、それぞれが単独で取り組むよりも、社会への貢献も学術活動としての意義も拡充されるはずです。実践家と研究家とが協働の深化をめざし、それぞれの立ち位置で大切にすべきマインド(問題認識と価値観に影響する志向)、そして磨きをかけるべきコンピテンシー(知識、技能、態度を統合して活用する能力)を明確にしたいと考えております。実践と研究との協働によって得られる成果ほど、保健医療福祉専門職の教育と育成の場において、公衆衛生活動の社会における意義および学術研究としての魅力を伝えられるものはないはずです。実践と研究との協働を深化させるためのマインドとコンピテンシーを明確にすることは、公衆衛生の領域での若手人材を確保する上でも有意義であると考えております。

高知市には大規模なコンベンション施設がなく、第78回学会総会は4つの会場での分散開催になります。九反田地区と本町地区とに2会場ずつを配置いたします。2つの地区は、徒歩で25分、路面電車で10分の距離です。それぞれの地区に、関連が深いテーマでのプログラムをできるだけ配置し、参加者のご不便を少なくできるよう、役員、実行委員会、学術部会員の力を結集して準備を進めております。多数の演題のご応募と、多くの会員がご来高くださり、本学会総会に積極的にご参加いただくことを心よりお待ち申し上げます。

本町地区の会場からは、江戸時代からの天守と追手門が残る高知城が、また、九反田地区の会場からは、幕末の志士坂本龍馬の像が太平洋を臨む桂浜への移動の拠点になるはりまや橋が徒歩圏内です。高知県には、食のコンテストで常に上位にランクインする鰹のたたきと日本酒に代表される豊かな食材があります。会員の皆様の第78回学会総会へのご参加が、開催地域の風土と食をお楽しみいただく機会にもなれば幸いです。