あらゆる微生物に対峙する感染症検査の構築

#ご挨拶

このたび、第35回日本臨床微生物学会総会・学術集会の総会長を仰せつかり、開催を担当する先生方を代表してご挨拶申し上げます。

日本臨床微生物学会は、1990年1月20日に清水喜八郎元理事長の下で発足し、第1回学術集会は紺野昌俊会長によって都内で開催され、私の記憶では収容人数300名以下の会場に350名以上が参集し、ホール内では中央の通路でさえ体育座りをした参加者で埋め尽くされ、会場から溢れた参加者も含めて熱気ある議論が交わされていました。あれから35年を迎えようとしている今、臨床微生物検査は塗抹検査の解釈、各種培養法、同定検査法、抗菌薬感受性検査法、核酸増幅検査法など様々な検査法はめまぐるしい進化を遂げてまいりました。

近年では、世界中を震撼させた新型コロナウイルス感染症によって、微生物検査室のみならず一般開業医でさえ核酸増幅検査を扱うという、これまで想像もし得なかった状況に変化しています。

本学会のテーマは「あらゆる微生物に対峙する感染症検査の構築」といたしました。現状の医療機関における臨床微生物検査は、臨床医との連携の下で細菌感染症には対峙できているものの稀な細菌、真菌、寄生虫、リケッチャ、ウイルスへの対応は十分とは言えず、また人獣共通感染症をはじめ諸外国から入ってくる輸入感染症に対しても対峙できる体制が整っているとは言い難いところがあります。

私は常々あらゆる微生物に対応可能な核酸増幅検査法の構築を願ってきましたが、診療報酬上の問題が壁となり現在も実現できずにいます。しかしながら、これからの診療報酬改定では各専門学会が示すガイドラインを重要視することが示されたことによって、世界の感染症に対応可能な細菌培養はもちろんのこと、多項目同時核酸増幅検査法、抗原・抗体検査など「あらゆる微生物に対峙する感染症検査の構築」を進めていく必要があります。

2024年2月9日~11日はパシフィコ横浜ノースにご参集頂き、第35回日本臨床微生物学会総会・学術集会において、医師、臨床検査技師、薬剤師、獣医師、看護師などより多くの先生方に意識を高め、議論を深めて頂き、日本の感染症診療と検査がさらに発展することを願っております。

大塚 喜人

総会長 大塚 喜人

医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
臨床検査部 部長

大塚 喜人

副総会長 大曲 貴夫

国立国際医療研究センター病院
国際感染症センター長