学術会長挨拶
ようこそ新しい時代へ Welcome to the New Era
2023年9月21日(木)~23日(土・祝)の3日間、第82回日本癌学会学術総会をパシフィコ横浜において開催させていただくこととなりました。日本癌学会のミッションは「がん研究を通してがんを征圧する」ことであり、過去10年はまさにそれが現実のものとなったといえます。がんの基礎研究の進歩は次世代シークエンサーの登場によって加速し、発がんに関連した遺伝子変異が次々と同定されると共に、それらを標的とした薬剤の実用化および新たな視点からのがんの理解がもたらされました。さらに2019年からは日本においても、複数のがん関連遺伝子の配列を一度に解析し治療法を最適化する「がんゲノム医療」が国民皆保険の下スタートしたのです。これらの過程で日本癌学会会員も大きな役割を果たし、まさに基礎研究とがんの臨床がダイレクトに結びつく興奮を味わうことができました。
今日、がん研究の進歩はさらにその速度を増していると言えます。一見正常に見える我々の細胞にも体細胞変異が蓄積していることも明らかになりましたし、一細胞解析が進んだ結果、腫瘍内多様性も正確に把握可能になっています。同様に腫瘍微小環境における周辺細胞の意義も次々と解明されつつあります。今まで見落としがちだったRNAスプライシング異常の発がんにおける役割も大きな注目を集めています。また日本においてもがん全ゲノム解析事業がAMEDにおいてスタートし、日本人のがんの理解が大きく進もうとしています。
このような状況下にあって、がん研究も、我々のコミュニティを越えた連携を積極的に模索しなければ国際競争力が保てず、いやおうなく新しい時代に突入したと言えます。そこで第82回総会は多くの新しいプログラムにチャレンジしようと思います。例えば、「Bioinformatics Hands-Onシリーズ」でバイオインフォマティクスの学習の場を提供するとともに、「創薬シーズ大集合」シンポジウムなどで薬学・企業の方との連携を深める試みも複数開く予定です。
この大変革期を最大のチャンスととらえ、総会テーマは「ようこそ新しい時代へ:Welcome to the New Era」としました。是非皆様と共に新しい日本癌学会学術総会を作り上げていくべく、積極的なご参加をよろしくお願いします。