会長挨拶

第10回日本ニューロリハビリテーション学会学術集会
大会長 出江 紳一
東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野 教授
東北大学大学院医学系研究科 肢体不自由学分野 教授

第10回日本ニューロリハビリテーション学会学術集会ならびに第1回日韓台ニューロリハビリテーション学会を開催させて頂くにあたり一言ご挨拶を申し上げます。
本学会はNeural RepairとNeuroRehabilitationに関わる多様な領域の研究者と臨床家による学術団体です。この30年間の目覚ましい脳科学の発展はニューロリハビリテーションという学問領域を生み発展させてきました。神経可塑性を基盤とする様々なリハビリテーション治療技術が開発され,臨床に応用されています。一方で病態や回復機序には個人差が大きく,たとえば同じニューロモデュレーション手法が有効である症例と無効である症例を経験します。今後,ニューロリハビリテーションが更に発展するためには回復の原理を明らかにすることが重要であると考えます。その試みの一つとして2014〜2018年度に実施された文部科学省科研費新学術領域研究「脳内身体表現の変容機構の理解と制御」では,脳科学,システム工学,リハビリテーション医学の研究者が共同研究を通してモデルベーストリハビリテーションの開発に取り組んで参りました。そこで本学術集会テーマとして「回復の原理を知る」を柱の一つと致しました。

リハビリテーション医学は患者・障害者のニーズに発して誕生し発展した医学であり,科学研究の成果をケアに活かし,患者中心医療の質向上に繋げることが大切です。完全治癒が困難な,あるいは進行する病態を扱うニューロリハビリテーションにおいて,研究成果を早期に社会実装する道筋をつけることも,本学会の役割の一つであると考えます。そこで,学術集会テーマのもう一つの柱を「ケアに活かす」としました。
第8回日韓ニューロリハビリテーション学会となる予定であった国際学会は,2018年韓国で開催された第7回学術集会日韓台ニューロリハビリテーション学会において台湾の合流が決まり,今回,第1回日韓台ニューロリハビリテーションとして新たなスタートを切ることになりました。シンポジウムのテーマをdysphagiaとdementiaとし,各国のエキスパートにご講演頂きます。
4月末から5月にかけての仙台は新緑が美しく一年の中でも最高の季節です。多くの皆様が本学術集会に参加され,学術の成果とともに仙台の良さを堪能して下さることを願っています。