第41回日本心臓移植研究会学術集会 開催にあたって
第41回日本心臓移植研究会学術集会
大会長 絹川 弘一郎
富山大学大学院医学薬学研究部 内科学第二 教授
このたび第41回日本心臓移植研究会学術集会の大会長を仰せつかりました富山大学第二内科の絹川から開催にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。例年、心臓移植研究会は日本心不全学会学術集会の3日目に同時開催となっておりまして、今年も10月23日(日曜)に朝から夕方学会閉会までの時間いっぱいを使ってプログラムを企画いたしました。またDT研究会もここ数年心不全学会との同時開催に移行しまして、2日目の午後に大阪大学の戸田先生のもと、予定されております。このように、重症心不全に対する補助循環と移植というトピックをいながらにして討論できる場を作っていただきましたこと、心不全学会理事長筒井先生と心臓移植研究会代表幹事澤先生はじめ、役員の先生方に深謝いたします。
さて、今年後半はCOVID-19パンデミックもそれなりの状況に落ち着くのではないかと期待しておりまして、今次の心不全学会学術総会も奈良医大の斎藤先生のもと、奈良現地開催ができることを祈っております。万が一のことも考えられて、ハイブリッド開催になっておりますが、状況が許せばぜひ現地にお越しいただき、活発なご討論をお願いいたします。奈良の新しいコンベンションセンターは私も初めて参りますが、宿泊施設その他とても充実しているとお聞きしており、私が宣伝するのはお門違いですが、秋の奈良観光をかねて私自身も大変楽しみにしております。
肝心の心臓移植研究会のプログラム内容ですが、今回テーマを「この時代だからこそ共有したい世界標準の心臓移植へ」とさせていただきました。「この時代」の意味はここ数年COVID-19パンデミックの影響か、減少傾向にある我が国のドナー提供および移植件数にミスマッチが続いている移植登録者数の激増です。また昨年から保険償還が開始された移植適応外のDT-LVADも想定したよりは増えておらず、我が国の重症心不全治療に目に見えないハードルがある気がしております。DTについてはやはりあまりにも導入に時間がかかりすぎたことが伸び悩みの原因としてあるかと思います。しかし、それ以外にも移植医療が標準的心不全治療の1つに定着していた欧米と非常に特殊な治療として認知され続けてきた我が国の特に循環器内科医を中心に意識の差がまだまだ大きい、そのため移植医療を考えてここに適応外の事由があるからDTだなという発想が乏しいのではないか、と感じています。その意味でまず循環器内科医が移植を身近に感じなくてはならないのに、一部の医療機関でやっている噂で聞いた治療になってしまっている。自分の外来で診ていた重症心不全の方を紹介して移植を受けて元気にしているという経験値を共有して欲しい、そう思います。ですから、ドナーが少ないからこそ、「なんでもできることはする」というために「世界標準の心臓移植」を達成できるようにしたいと思いますし、アイデアによっては数も増えるかもしれません。世界に冠たる成績を誇る我が国の補助人工心臓治療と心臓移植治療をもっと多くの方に享受してもらいたいと思います。
そういうことで、今回は米国、ヨーロッパ、オーストラリアから心臓移植の現状と課題をお話ししただく構成を中心に組みました。その中で議論があるところですが、異種移植や心停止後臓器提供DCDなども話題としてお願いしてあります。さらに移植のアロケーションシステムに対する提言をシンポジウムに組み入れました。ここも「世界標準」とは異なる部分と感じております。また例年通り、移植認定医やレシピエントコーディネータのための講習も用意しております。ぜひとも心不全学会だけでなく、心臓移植研究会にもお運びいただき(ご存知とは思いますが心不全学会にご参加の場合、当研究会への参加は追加料金をいただきません)、身近なものに感じていただけましたら幸いです。秋に皆様と直接お目にかかることを祈念いたしまして、ご挨拶にかえさせていただきます。