会長挨拶
日本医療マネジメント学会 第22回九州・山口連合大会
会 長 矢野 篤次郎
国立病院機構 別府医療センター 名誉院長
わが国をはじめ先進国の寿命は延伸し、「人生100年時代」といわれるようになりました。その一方で、多くの先進国では少子化、人口減少が進み、100年人生を支える「社会」には様々な問題が噴出しています。「人生100年時代」の実現に携わってきた医療・福祉も例外ではありません。国が2025年を目標としてきた医療介護総合確保推進計画は通過点に過ぎず、2040年を見据えた新たな計画が求められています。そのなか身近な問題として、高齢者の孤立化に伴う療養生活支援の不足や認知機能低下による自己選択権の喪失が最適な医療・福祉を提供するうえで大きな障壁となっています。医療提供の原点である診療行為は医療者と患者さんとの医療契約で成立します。その医療契約の前提はインフォームドコンセントです。しかし、現在の「人生100年社会」ではインフォームドコンセントを日常的に行えない状況が生じています。そこでは、臨床現場における医療(臨床)倫理が重要となります。医療倫理というと生殖医療や遺伝子治療など先端医療の是非が注目されがちですが、「人生100年社会」ではより身近な医療・福祉提供の場でたくさんの問題が発生しているのです。加えて、近年では地震や大雨洪水など自然災害が増え、高齢者の避難支援も大きな問題になっています。
以上の状況を鑑みて、今後の医療・福祉のありように関して社会に向けてアカデミックな立場から提言をするべく本学術集会のテーマを「人生100年社会の医療マネジメント ― 臨床現場からの提言 ―」としました。医療・福祉に携わっている会員の皆さまから「人生100年社会」で日頃経験し考えていることを発表して頂き、会員全員で情報共有してより良い社会に向けて提言できれば幸いです。
別府の温泉だけでなく、本学術集会(第22回九州・山口連合大会)でも熱くなりましょう。別府観光の父である油屋熊八の「旅人を懇ろ(ねんごろ)にせよ」のおもてなしの精神でお迎えします。