この度は英文誌の優秀論文賞に選出頂き、誠にありがとうございます。
本研究は、共著者でもある市立福知山市民病院総合内科の川島篤志先生が、これまでの高齢者診療を踏まえ、「顎落ち」が嚥下障害や誤嚥性肺炎などに関与していると考えていたものを、実際に総合内科に入院された患者さんを対象に調査・解析したものです。研究にご協力頂いた患者さまをはじめ、総合内科スタッフや病院関係者の皆様などに、心より感謝申し上げます。
本研究において我々は、下顎動揺性(安静臥床している患者さんの下顎角の両側付近を指でそっと支えるだけで、下顎が容易に1㎝以上動くことと定義)がある方では、経口摂取できる食形態に、より大きな制限があることを示しました。このような患者さんでは、いわゆる嚥下食など、摂取する食形態について適切に配慮していないと、誤嚥性肺炎などにつながる可能性があります。また、不適切な食形態の食事では十分量を摂取できず、結果的に低栄養に至るかもしれません。下顎動揺性は比較的簡単に評価できる方法であり、食形態や嚥下への介入の要否を、非医療者でも簡便に確認できる方法と考えています。高齢社会で広く使用される手法の一つになればと思います。
自身の臨床研究との本格的な出会いは、福原俊一先生がプログラムディレクターをされていた京都大学MCRで中山健夫先生の健康情報学教室に所属しながら、多くの良質な講義や演習を受けるともに、諸先輩方の研究に触れさせて頂いたことでした。濃密な1年を過ごした後は、日常臨床を継続しながら、少しずつですが研究を続けてきました。幸いにも、素晴らしい上司や同僚に恵まれ、多くのことに取り組めたことが今回の研究につながったと考えています。今後も同僚らと一緒に、患者さんの役に立つ臨床研究を進めていきたいと思います。ありがとうございました。