この度はこのような輝かしい賞にご選出いただき、誠にありがとうございます。
”Supporting Foreign Families in the Community: One Family Physician’s Challenge at ‘Koala Circle’”では、地域の外国人母子を対象とした支援において、家庭医がプライマリ・ケアの「大使」として、地域でアウトリーチに励むことの可能性について報告いたしました。
私が地域の外国人に関心を抱くようになったのは、専攻医時代から診療所で外国人住民を担当する機会が多かったためです。日本語が話せない非識字の方、ご自身は日本語流暢でも「子供が日本語分からず公園で一人ぼっち」と悩むお母さん、本国での予防接種歴が難解な親子等、対応に苦慮することもありましたが、私自身海外で育った背景もあり、やりがいを感じながら日々診療に励んできました。
そんな中、外国人育児支援団体「コアラサークル」に出会い、ボランティアとして相談支援活動を開始しました。当初は家庭医について「家庭医=家に来る医者?」と質問されるほどの認知度でしたが、毎週の集まりや親睦会への継続的参加で距離を縮めながら支援を重ねた結果、地域の家庭医やプライマリ・ケア施設を積極的に利用する家族が増え、日本での育児に自信を持ってもらえたことは嬉しい限りです。
新型コロナウイルスの影響もあり、外国人母子の孤立は今後ますます懸念されます。これまでは1組1組の母子に真正面から向き合う形での支援が中心でしたが、今回の受賞を機に、今後はより多くの外国人家庭を支援できるヒントとなるような研究に取り組むことを目標に掲げ、引き続き邁進してまいります。
最後になりますが、昨今の苦境の中、大会開催にご尽力くださった大会関係者の皆様、前例のない取り組みに理解を示しご指導くださった藤沼康樹先生をはじめCFMD東京の皆様、東京ほくと医療生活協同組合関係者の皆様、そして、共に本活動に携わってくださったコアラサークルの仲間に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
大学に属さず、家庭医として活動しながら研究を続けることには、日々難しさを感じる。研究時間を確保することも、研究指導者と繋がることも容易ではない。そんな中で不意に吉報を受け取り、心底驚いている。
私が研究に初めて触れたのは、北海道家庭医療学センターのフェローシップにおいて、福原俊一先生らiHopeが提供するfMAPプログラムの受講時であった。そこでは研究手法を学ぶにとどまらず、家庭医療の現場から研究発信することの意義を、草場鉄周先生よりご教示いただいた。その後、経営・管理に興味をもち、九州大学の医療経営・管理学専攻に社会人大学院生として入学し、福田治久先生から「論文を書くイロハ」を教わった。論文を書き査読対応に難渋していたころ、丸山泉先生からHarvard Medical Schoolが提供するIntroduction to Clinical Research Trainingをご紹介いただき、「研究から論文受理までのプロセスを完遂するイロハ」を学んだ。そして、iHeedが組織しUniversity of Warwickが認証するPostgraduate Diploma in Diabetes in Primary Careを通して、「英語で書き、発表するイロハ」を学んだ 。これらの出会いと学びが受賞という形で報われたことを、本当に嬉しく思う。2020年9月よりThe University of EdinburghのMaster of Family Medicine programmeで、家庭医療ならではの研究に取り組めるよう学んでいくつもりである。
今後も北海道家庭医療学センターの家庭医たちと、家庭医療の現場からの研究発信を続けていきたい。これまで研究をご指導くださった先生方、および研究にご協力・ご支援くださった皆様に心より御礼申し上げ、私からの喜びの言葉としたい。