わが国では全人口に対する65歳以上の割合は、2013年に25%となり、2060年には推定で40%になると見込まれている。高齢者の消化器病は、青壮年者とは異なった様々な特徴を考慮して、診断や治療に際しては視点を変えた特別な配慮が必要である。高齢者の消化器疾患の特徴として、併存疾患保有率が高いこと、悪性腫瘍が関与する場合が多いことが挙げられる。その治療に際しては、特に予後と生活の質(QOL)との関係を常に念頭に置いた対応が重要となり、原疾患だけでなく患者の全身状態を考慮したバランスのとれた治療が重要となる。近年、消化器疾患に対して内視鏡下に低侵襲で治療することが可能となっており、また、外科領域においても腹腔鏡下手術などの低侵襲な手術が広がりを見せている。高齢者にとってこのような低侵襲治療の普及は大きな福音である一方で、治療選択においては年齢のみならず、個々の状態を判断することが重要である。
本ワークショップでは高齢者消化器疾患に対する治療戦略と題して、各施設の高齢者に対する診断・治療の実際と問題点を報告していただき、現状と今後の課題について議論していただきたい。